日本夜行鉄道

日本の鉄道に、再び夜行列車の浪漫を(フィクションです)

基本構想(2)走行区間①

基本構想(1)でお示ししたとおり、どの区間を設定するかは、新幹線との競合や利便性を考慮して考えなければなりません。

 

まずは、東京駅からの夜行列車を考えます。

 

東京圏から西側への寝台特急と言えば、あさかぜをはじめとした九州方面が花型でしたが、前述の通り新幹線との競合、さらには地域によっては航空機との競合に勝つのは難しい状況です。

 

一方で、サンライズ瀬戸・出雲の上り列車を使った裏技にはヒントがあります。

 

サンライズ瀬戸・出雲の上り東京行きが、深夜運行に入って最後に客扱いする駅は大阪(0:33発)です。

そして、同列車が東京に到着するのが、7:08。

 

新大阪・東京間の東海道新幹線上り列車は...

最終(のぞみ 64号)新大阪21:24発 → 東京23:45着

始発(のぞみ200号)新大阪 6:00発 → 東京 8:23着

 

というわけで、最終より遅く出て、始発より早く着くが実現できています。

 

*ちなみに、サンライズ瀬戸・出雲の下り列車(高松(琴平)・出雲市行き)は大阪に運転停車しません。関西圏の停車駅は姫路(5:25着)のみなので、大阪でのビジネス利用には時間的には優位でも、使いづらい感じです。

 

これはサンライズ瀬戸・出雲の裏技的な使い方になるわけですが、これを前面に押し出したダイヤなら、東京圏と関西圏を結ぶ交通手段としての価値を持ち得るのではないかと考えます。

 

そこで、東京圏と大阪圏を結ぶ区間をまず一つ目の走行区間として想定することとし、「ミッドナイトあさかぜ」として計画します。

 

この区間は、かつて寝台急行銀河が運行されていた区間です。

 

銀河が廃止の憂き目を見たなら、その区間に夜行列車を走らせるのは難しいのでは?という声もあるでしょう。

 

実際、国鉄からJRに至る経営において、寝台列車の運行が費用面でネックになっていたことは事実のようです。

 

利用率も下がっていたといいますが、経営面で重荷になっている寝台列車を存続する意思のなさが、料金設定や設備改修に後ろ向きな姿勢につながり、顧客離れにつながったとみる方が自然でしょう。

 

ただ、顧客の利便性に目を向け、適正な料金設定や求められる設備が確保できれば、十分に可能性があると確信します。

 

なお、愛称に「あさかぜ」を採用したのは、最初に「走るホテル」と称された20系客車を導入して「ブルートレイン」と呼ばれる列車の祖としての愛称に敬意を表する意味を込めました。

 

区間としては寝台急行銀河と一緒ですが、JR西日本のクルーズトレイン「WEST EXPRESS 銀河」に採用されているので避けました。

基本構想(1)列車設定の基礎

どの区間に設定するか

 

日本夜行鉄道として、どの区間に列車を設定するかは基本の問題です。

 

かつて国内には、

 

東京駅-中四国、九州(宇部出雲市、博多、大分、長崎・佐世保、宮崎、鹿児島)

大阪駅-九州(博多、大分、長崎・佐世保、宮崎、鹿児島)

上野駅-東北・北海道、北陸(秋田、青森、札幌、金沢)

大阪駅-東北・北海道、北陸(秋田、青森、札幌、新潟)

 

を中心に、数多くの夜行寝台特急が駆け抜け、さらに銀河(東京-大阪)、能登(上野-金沢)などの夜行急行も走っていました。

 

しかし、現在定期運行されている寝台特急は、サンライズ瀬戸・出雲(東京-高松(琴平)・出雲市)のみとなりました。

 

JMRとして列車を運行させるにあたり、どこを想定するかを考えるためには、サンライズ瀬戸・出雲が今だ人気列車として運行を続けている背景にも迫る必要があります。

 

新幹線速過ぎ問題

先ほど紹介した寝台特急の路線網ですが、そのほとんどは新幹線との並行区間となります。

これは、新幹線と寝台特急がともに都市間長距離交通を担っていたことを考えるとおかしいことではありません。

 

しかし、東京九州間の寝台特急は、山陽新幹線博多開業と同時に廃止に追い込まれてはいません。

この間の寝台特急が廃止になっていく一つの契機は、300系のぞみが登場し、新幹線の高速化が顕著に進んでからのことになります。

 

たとえば、寝台特急あさかぜは、全盛期東京を18時台に出発し、博多には翌朝10時台に到着していました。

一方新幹線は、100系使用時で始発では東京6時発ひかりに乗っても、博多到着が12時前後、最終列車も逆算すると東京を17時前後には出発していたはずです。

当時であれば、寝台特急の方が新幹線の終電より遅く出て、始発より早く着けることがはっきりしていました。

 

しかし、300系投入・のぞみ誕生以降、新幹線の車両は500系から700系系列へと進化し、所要時間が5時間を切るようになりました。

現在、東京を出る一番列車ののぞみ1号は東京6時00分発→博多10時52分着。最終のぞみ59号は東京18時51分発→博多23時51分着となり、寝台特急の発着時刻といわば”逆転“してしまいました。

 

上野口東北方面の寝台特急は顕著で、新幹線延伸とほとんど時を違えずして臨時列車化からの廃止、もしくは即廃止となりました。

これは、並行在来線を第3セクター化することで生じる運賃計算等の影響もありますが、新幹線の速達性が寝台特急を凌駕してしまったことが大きな要因であることは否めません。

存続が熱望されていた北斗星カシオペアトワイライトエクスプレスに至っては、北海道新幹線開業と同時に変わった青函トンネルの使用法がネックになった部分もあり、人気と実力だけでは太刀打ちできない新幹線の”強さ”も感じました。

 

逆に言えば、今後夜行列車を復活させるに当たっては、新幹線と比較した際に、発着時刻における優位性が必要となります。

 

サンライズ瀬戸・出雲は、岡山での乗り換えが必要な新幹線より、終電より遅く出て始発より早く着く状況なので、その利便性を含めて支持されていることもあるかと思われます。

 

価格帯をどう設定するか

新幹線との発着時刻での優位性を担保できた場合に、つぎに考えなければならないのは価格帯になります。

ビジネスホテル安過ぎ問題

寝台特急の料金形態は、乗車区間の運賃+乗車区間の特急料金+寝台料金となります。

 

私はこの料金形態こそが、寝台特急衰退の一因と考えています。

 

通常の特急列車価格に単純に寝台料金を上乗せしたのでは、割高感が否めません。

 

東○インや○パホテルのようなチェーンをはじめ、そこそこの設備を有していながらお手頃なホテルが、駅からのアクセスも抜群な立地で立ち始めると、同じ値段を払うならホテルにする(終電前乗り+宿泊、前泊+始発)という利用者の動向はむしろ自然です。

 

以前の寝台特急の主力(今は定期列車に設定がない)開放B寝台の方が、ビジネスホテルのシングルルームより高いのでは、経済性はもちろん、居住性、安全性でも太刀打ちできません。さらに割高になる個室寝台ではなおさらです。

 

つまり、料金設定に当たっては、運賃は変えられない分、これまでの特急料金+寝台料金を改め、ビジネスホテルの価格を参考にした寝台列車料金を設定する必要があると考えます。

 

価格で対抗できれば、乗車前後にチェックイン/チェックアウトする手間と、乗って寝れば着くという寝台列車の利点が競合ポイントになる可能性があります。

 

価格では、夜行高速バスとの比較もよくされますが、ビジネスホテルに対抗できる価格を提供できれば、定時性と完全フルフラットで休めることが十分に優位性になると考えています。

 

サンライズ瀬戸・出雲は、価格としてはビジネスホテルに対抗できる価格設定ではありません。

その分を時刻設定でカバーしている側面もあるのでしょう。

 

以上2点を基礎として、運行形態と料金設定を考えていきます。

 

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余談

 

ちなみに、航空便との比較はどうでしょう?

 

速さでは全く歯が立たない航空便ですが、福岡空港を除くと、空港が市街中心部と離れているため、鉄道の優位性が担保できている側面があります(逆に言えば、他の都市から福岡市街への移動は航空便が圧倒的優位です)。

あと、駅に着いてから列車に乗車するまでと、空港についてから旅客機に搭乗するまででは手間と時間が違います。

価格は航空会社や購入方法によって大きく異なるため比較は難しいところですが、航空各社のチケット販売については参考にできることがあるかもしれません。

 

 

 

会社設立のお知らせ

移動手段としての夜行列車運行管理専門会社
日本夜行鉄道株式会社、設立。
移動に、快適と浪漫を。

日本国内の移動手段は常に進歩を遂げてきました。
しかし、一方で、特に鉄路においては長距離の移動についての手段が偏ってきてしまいました。
以前は「値が張っても速く」を新幹線が担い、その代わりに「時間がかかっても手軽に」というニーズに応える鈍行や安価な夜行が存在していました。
現在、新幹線は速さ、装備の両面で格段の進歩を遂げている一方で、それ以外の移動手段は顧みられず、長距離列車は次々と数を減らしています。
安価で手軽な長距離移動の手段としては、主に高速バスが担っているところですが、鉄道がバスに勝る点は多くあります。
運行の定時性、夜行においてフルフラットな空間が生み出す快適性、座席定員、貨客混載による物流との両立の可能性。
我々「日本夜行鉄道」は、鉄道がもつこのメリットを最大限に引き出し、日本国内の移動手段としての夜行列車のある意味では復権、ある意味では新規開拓を目指します。
今後JR各社との様々な協議、連携を進め、別記の路線構想を中心に夜行列車の運行を早期に開始できるよう邁進いたします。

平成30年10月14日(鉄道の日)
日本夜行鉄道株式会社
代表取締役 棚崎 文雄

※この文章はフィクションです。